先進地視察(2017)

10月10日から12日まで、先進地視察ということで静岡県と岐阜県に行ってきました。

初日の訪問先は、静岡県浜松市にあるフローリング等無垢木材のインテリアを企画・製造・販売する株式会社マルホン様と提携工場の株式会社カネキチ様です。
浜松市にあるこの2社への訪問は今年2月に引き続き2度目で、マルホン様のショールームでは、多様な商品を見て、触れて、確かめることができるのは前回同様ですが、一部の展示は変更され、またおしゃれな空間が演出されていました。商品の質の高さ、ラインナップの多さはもちろん、その魅せ方の工夫など、カタログからだけではうかがい知ることができないことを感じられる場でした。

カネキチ様では、さまざまな製材関連機器や作業工程などの説明をしてもらいながら、今回は平日であったため稼働中の工場の様子を見学することができました。高周波真空乾燥機の仕組みや特徴についても伺うことができ、乾燥を終えたばかりの材を見ることもできました。

マルホン様のショールームの様子やカネキチ様の工場の様子は2月の視察報告でもご紹介しています。

 

浜松での視察を終え、静岡で宿泊…ではなく、翌朝の山の見学に備えて、再び東海道新幹線で名古屋、電車を乗り継ぎ岐阜へと移動しました。
今回岐阜県を訪れた目的は、広葉樹活用に関する地域連携の先進地視察ということで、訪問先は、本巣市と高山市にあるNeo Woods(根尾の広葉樹活用プロジェクト)の連携企業3社でした。このNeo Woodsプロジェクトは、規格外(曲がり、小径木など)の広葉樹を木製品として活用する地場型・循環型の国産広葉樹有効活用システムを構築しようという取り組みです。使い道をあらかじめ指定して材料を加工することで、良材の使える幅を広げ、森林資源の価値創造につなげるような地域における木材産業の川上から川下までの垂直連携の試みです。
ということで、2日目はNeo Woodsプロジェクトの連携企業3社のうち木材生産を担当する有限会社根尾開発様、製材・乾燥を担当する株式会社カネモク様の2社を訪問しました。

本巣市の根尾開発様は、根尾地域を中心に約3,000haの社有林を所有し、そのうち約2,000haが広葉樹林です。見学させていただいた山林は、岩泉町の山と比べると径の太い木が多かったものの、樹種や生え方といった林相や急峻な地形などとても類似点が多かったです。広葉樹の伐採現場では、皆伐の場合でも約20m間隔で立木を残し、夏場の下草刈り時に木陰ができるようにしているという工夫がされていました。

皆伐だけではなく広葉樹の択伐も行われており、対象とする山で樹種を選択し大径木を残しながら注文に応じて伐採するといった取り組みも行われていました。また、冬季は積雪で現場に向かう道路が閉鎖されるため、本来ならば伐採作業に向いている冬に作業ができず、木に水分が多い春から秋に伐採作業を行わなければならないという素材生産には気候的に不利な地域です。しかしながら、少量であっても伐採直後の原木を製材所に運搬し、質が低下しないうちにできるだけ早く製材することがこの地域連携の取組みでは可能であるとのことで、山で伐採した原木は3日後には製材されるというお話しでした。

また、これまで何度も枯死の危機にさらされてきた、国の天然記念物・根尾谷淡墨桜の再生保護も行っており、樹木の保護技術も受け継いできています。

余談ですが…山の見学中にはその場でお湯を沸かし、Neo Woods企画の道具を使って挽きたて淹れたてのコーヒーを振舞っていただきました。山で飲むコーヒー、おいしかったです。

 

2日目午後は高山市に移動し、株式会社カネモク様を訪問しました。

「高山木の里団地」内にある工場で、従業員は社長を含めて7名という少人数で営まれています。広葉樹を専門として主に家具材の製材を行っており、木材のひずみで複雑な形状であったり、小径木であることにより規格外とされていた材料を効率的に木製家具や小物等の用材に製材する手法の確立と実践を行っています。10年ほど前に家具会社の下請けから脱却、自社の営業活動で顧客を獲得し、広葉樹原木の仕入れから製材、木取り、販売までしっかりとした製品管理を行っている会社です。

水分を多く含む時期に伐採された原木を製材し、天然乾燥せず、そのまま乾燥機での人工乾燥を行うといった工夫など、気候的に不利な地域で広葉樹の製材・乾燥を行ってきています。自社でデータを採取しながら作成した乾燥スケジュールには、基本が20パターンあるとのことで、見学した当日には4台の乾燥機が稼働していました。

広葉樹の製材や、樹種や板の厚さなどによる温度や時間の管理など乾燥スケジュールについてさらに詳しく伺いたいところでしたが、さすがに企業秘密でした…。

実際に機械稼働中の作業の様子を見ることはできませんでしたが、桟積みの桟木の入れ方や小さな端材であってもできる限り無駄なく木取りすることなど、広葉樹製材への取組み方についてたいへん参考になるものでした。

 

そして3日目は、同じく高山市にあるオークヴィレッジ株式会社様の本社ショールームと工房を訪問しました。

Neo Woodsプロジェクトの事務局でもあるオークヴィレッジ様には、「100年かかって育った木は100年使えるものに」、「お椀から建物まで」「子ども一人、ドングリ一粒」という3つの理念があり、永い時間をかけて育った木で永く使い続けられるものをつくり、小物から建築まで暮らしの様々な場面で利用する、そして材料として使ったらまた育てるといった、循環型社会の提案が行われています。

木、素材、周りとの調和を大切にし、小物からテーブル、サイドボード、食器棚、そして建物全体をつくります。建物の建築は、受注生産で基本設計・施工は自社で行っており、建物には木組みが使用され、基本的には組み立てたものをまたばらして、再度組み立てることもできるということでした。

こうした背景のもと製作された様々な商品は、乳幼児向けのおもちゃ、小物や家具など、どれも温かく柔らかい手触りで木の特徴を活かしたデザイン、安心、安全に使えるような配慮がなされていました。またネジやくぎを使わず木組みで作られている家具など、職人さんたちの技術の高さがうかがえるものばかりでした。

残念ながら工房内は撮影不可ということでしたが、家具の製作や小物の仕上げ、過去に販売した椅子の漆の塗り直しなども行っており、一つひとつの商品(作品)を丁寧に加工する様子を見学させてもらいました。

規格外材の利用や使い道を決めた上での択伐、製材・乾燥・加工、そして販売までの地域連携による広葉樹の有効活用ですが、豊富な広葉樹を有し、川上から川下までの事業者がそろう岩泉町でもぜひ実践したい取組みでした。