先進地視察(2018)

ソマミチ

 「木を使う社会の仕組みを作ること」を合言葉に、信州・松本を拠点とし地域産カラマツ材を中心とした森林資源利活用のための地域連携が行われています。そして、この取り組みから「一般社団法人 ソマミチ」が昨年12月に設立されました。ということで、今回の視察先は「ソマミチ」です。

 
 

1日目(8月5日)

 気温20℃を下回る雨の岩泉を出発し、盛岡駅から東北新幹線~北陸新幹線へと乗り継ぎ、さらに在来線特急列車に乗り換えて松本駅に到着。約800㎞の移動後到着した松本の天気は快晴、35℃を越える猛暑日でした。

(松本駅)
 
 レンタカーで向かったのは初日の宿泊先でもあるファインビュー室山。その名のとおりファインビュー…安曇野の高台に立地しており松本市内を一望できる素晴らしい眺めでした。

(ファインビュー室山からの眺め)
 

 さて、本題へ…。
 
 施設内の会議室にて、ソマミチメンバーの皆さまと情報交換会。代表の原薫様(柳沢林業)、香山由人様(企業組合山仕事創造舎)、森円佳様(林友ハウス工業(株))、堀越みどり様(Landschaft(ランドシャフト))、古川大輔様((株)古川ちいきの総合研究所)が、ご出席くださいました。
 連携に至るきっかけやソマミチのヴィジョン、カラマツ材を利用する訳、そしてツアーの企画・運営についてなど、興味深いお話ばかりでした。ツアーは各メンバーが主体となり様々なテーマで今年は10回を予定しているなど、まさにつくる会でも今後進めていきたいツアー企画ですが、まずは森林コンダクターがやりたいことから始めたらよいのでは…とのアドバイスもいただきました。

(ソマミチメンバーの皆さまと情報交換会)
 
 

2日目(8月6日)

 視察2日目は、まず地域産材を利用した外壁材・カラマツT&Tパネルを取り扱う林友ハウス工業(株)様を訪問しました。

(林友ハウス工業(株)様の事務所前にて)
 
 常務取締役・竹腰博毅様にお話を伺いながら、T&Tパネルの原材料である地域内から出材されたカラマツが積まれた土場や加工工場を見学しました。どこの山から出材されたかによっても丸太の様子が異なっており、間伐遅れのカラマツ林から出材された丸太にはむしろ年輪の幅が狭い目の詰まった良材もあるとのこと。

(常務取締役・竹腰博毅様にご案内いただきました)
 
 T&Tパネルは幅の広いものと狭いものを組み合わせて施工するため丸太の中心部と周辺部それぞれから製材した板を利用でき、さらに皮に近い部分や短尺のものも製材して利用することで、歩留まりを上げ丸太を有効活用しています。

(T&Tパネル(左)、短尺でも製材して有効活用(右))
 
 T&Tパネルは外壁材として利用されるため、節の抜け防止などの加工や塗装を行っています。

(節の加工(左)、塗装中のT&Tパネル(右))
 
 
 またT&Tパネル施工事例ということで、薪ストーブやチェーンソーなどを扱う(有)ヤマショー様の安曇野ショールームをご案内いただきました。

((有)ヤマショー様の安曇野ショールーム)
 
 薪ストーブ本体や薪を使った暮らしに関連したグッズが展示されているおしゃれなショールーム内、そして建物の外壁はカラマツT&Tパネル。パネルを固定しているネジにもこだわり、ドイツ車に使われるネジを製造しているメーカー製とのことでした。

(外壁材にはカラマツT&Tパネル)
 
 
 その後、前日に引き続き原様と合流し、ソマミチのシェアフォレスト(田中製材所所有林うちだの森)に伺いました。現地では、(有)田中製材所常務取締役・田中英光様にご案内いただきました。

(ソマミチのシェアフォレスト(田中製材所所有林うちだの森))
 
 現在はツアー・イベント開催の場として利用しており、将来的にはソマミチサポーター(会員)がキャンプなどで気軽に利用できるよう開放していきたいとのこと。ぜひ実際に参加してみたい、そして岩泉でもやってみたい楽しそうな取組み・活動の場づくりです。

(施工途中のウッドデッキに登らせてもらいました)
 
 
 午後からは山の辺建築設計事務所・宮坂直志様ご案内のもと、カラマツを使用した施工事例として南相木村村営住宅等を見学させていただきました。

(山の辺建築設計事務所・宮坂直志様にご案内いただきました)
 
 天井や床などの造作材はもちろんのこと、反りやネジレの起きやすいカラマツも製材や施工の工夫を施すことで土台や柱など構造材としても利用可能とのことで、一部アカマツも使われていますがほとんどが地元産カラマツ材を利用した公営住宅です。

(現在建設中の南相木村村営住宅)
 
 また、南相木村役場・町長室を訪問させていただき机など地域産材で作られた家具を見学させていただきました。

(宮坂様、役場の皆様と南相木村役場前にて)
 
 村長とお会いしてお話を伺うこともでき、また役場の主要な立場の職員の皆さまお集まりいただき、地域産カラマツ材利用の村営住宅等をはじめとする南相木村の取組みに関するお話を伺うことができました。

(南相木村村長とご対面(左)、役場の皆さまと情報交換会(右))
 

(前田大作様(アトリエ m4)製作のカラマツ製の家具)
 
 

3日目(8月7日)

 視察最終日の訪問先はソマミチメンバーではなく、岩泉事業所が「つくる会」会員である(株)吉本さんの本社を訪問しました。

((株)吉本さん本社社屋)
 
 地域産カラマツ材造りの社屋、径級ごとに仕分けられたカラマツ原木が並ぶ土場、期間限定で開園している社有ブルーベリー園などを見学させていただきました。土場に並ぶ原木の多くは、土木資材の杭として利用されるとのことで細いものでは径5cmのものから仕分けられており平均の歩留まりが8割を超え、一本の木から無駄なく製品にしているということでした。

((株)吉本さん本社土場)
 
 杭は原木から皮を剥いて製品にしていますが、剥いた皮も産業廃棄物とせず有効活用、一部はブルーベリー畑に撒いて防草も兼ねた有機肥料にしているとのことです。

(社有ブルーベリー園)
 

 また、(株)吉本さんも構成員として参加している佐久穂町のキャリア教育としての森林林業体験学習事業「さくほ森の子育成クラブ」の取組みをご紹介いただき、創造の森(町立佐久穂小・中学校学校林)を見学させていただきました。小学4年生から中学1年生まで学年別にカリキュラムが組まれており、植樹のみではなく地拵えや下刈り体験、高性能林業機械の作業見学や操縦体験などを創造の森で行っているとのことでした。

(創造の森(町立佐久穂小・中学校学校林))
 
 
 反りやネジレなどが起こりやすいカラマツを構造材としても利用する技術、松枯れ等の被害木や菌による着色があっても強度的には問題のない材も一般材同様に利用・流通させ地元産材を積極的に活用する取組み、ツアーの企画・運営に関してなど、ソマミチメンバーの各事業者や地域連携による興味深い先進的な取組みばかりでした。また、(株)吉本さんの本社の業務や地域でのキャリア教育など、岩泉での今後の取組みに参考になるたいへん有意義な視察となりました。