2018.04.24
このコーナーでは、岩泉の森や町で活躍する、「森の人」をインタビューしていきます。今回は、つくる会会員・(株)西倉工務店の西倉正三氏をご紹介します。
木造の魅力を引き出す仕事人
“岩泉での暮らしを支える2社の工務店”
Part1: 株式会社西倉工務店 西倉 正三 氏
(西倉正三氏)
―会社の創業・設立について教えてください。
創業は私が21歳の時(昭和43年8月)。会社設立は昭和63年。父も祖父も大工、その先代は山伏でした。「西倉」というのは、南部の殿様のお墨付きということでもらった名字、殿様の部下で結構古くから続く家系です。
出身は小本地区で、中里小中島分校に通っていましたが、分校と本校で学芸会や運動会はそれぞれ行うので、年に2回ずつやっていましたね。中学校は中里中ではなく小本中へ通いました。その後、夜学・小本の定時制高校へ通いました。仕事を始めたのは、14歳で弟子入りした時からです。免許を取った後は現場に中古のバイク通っていました。夜は学校、昼は大工という生活で毎日ヘトヘトに疲れていました。学校では漢字の書き取りで、『柾』など木へんの字を帳面がいっぱいになるまで書け、と言われたので、ページいっぱいの大きな字で書いたこともありました(笑)。
(事務所外観)
田舎で仕事がある時は、出張して住み込みで作業していました。その頃から木が好きになりました。山で立木に墨で使い道を書き伐採していました。この木は何寸で柱用、梁用とか。木を使うのに山に入り見て回っていました。
棟梁からは「お金を稼げないと靴下や帽子も買えないからしっかり稼げ…」と言われていました。自分のことは自分で養うくらいにしないとダメ。こうした経験からインターンシップなどで学生が来ると仕事を教える前に、講義で自分の経験からの話をします。まずは掃除、洗濯、茶わん洗うなど、自分のことは自分でやってみろ…と。
―現在は具体的にどのようなお仕事をされているのですか?
以前、西倉工務店が無いと町の仕事は誰がやるのか…と言ってもらえたことがあります。町に協力していれば良いことがある。個人の住宅はよっぽど頼まれた場合に建て、普段は、役場の仕事を中心にしています。だからこそ町のためになること、ご恩を返していくためにボランティア、キーホルダー作り、社協の仕事など積極的に取り組んでいます。そういう役目の人がいないと町づくりは進まない。ただ、儲けねばないとうのも本音ではあります。
(座面・背もたれに木を使って、壊れたパイプ椅子を再利用)
―これまでで辛らかった思い出はありますか?
まず、辛いと思ってはダメ。建設業は一番のクレーム産業だから、お客さんからのクレームは必ずあります。木は動く、乾燥させても動く、お客さんを説得してから使ったとしてもクレームがくる時はきます。材料は、今は町内の各製材所にお願いして木を使わせてもらっています。同じ生活をして、おいしいものは分け合う。いい仕事も分け合ってやろうという考えで仕事をしています。
―岩泉の木を使うとしたら、どのように使いますか?
住宅全般、柱も床にも木を使いたい。でも木を使うには、お客さんを説得する必要があります。説得するマニュアルも作ったことがあります。説得の時、謝って長く話していると納得してくれます。今の家の作りだと木はあまり要りませんが、すべて木でやったらいい。構造材はできるし、羽柄材、垂木、間柱、貫、天井縁、胴縁など、どこにでも木は使えますから。
(壁板に町産材を使用した新築住宅)
―FSC®森林認証、つくる会へ期待することを教えてください。
FSC®森林認証のような取り組みは国全体、岩手全体でやるべきだと思います。私には個人でも、会社でも所有している山があります。木は好きなのに山を持っていないというのもおかしいし、ちょっとでも山に返したいという思いがあるので、最近では山を買い始めました。他の地域で失敗している、取得してもダメだから…ではなく、しっかり考えてやってみる、何でも失敗はつきものだから。
―好きな岩泉の樹は何ですか?
やっぱり岩泉にいればアカマツ。材料として、冬に伐って乾燥させても夏にカビが入ってしまいますが、キノコが生えるし、冬も青々として生きている気を感じます。
会社名:株式会社 西倉工務店
所在地:岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉合の山12-4
事業概要:建設業