【岩泉の森の人にきく】株式会社吉本岩泉事業所・由井正宏さん

 このコーナーでは、岩泉の明日の林業をつくる会に所属し、共に岩泉の森や町で活躍する「森の人」 をインタビューしていきます。今回は、(株)吉本岩泉事業所の由井正宏氏をご紹介します。
 
FSCの恵みを紡ぐ 素材生産と加工
“素材”と“加工”の二刀流

 

Part1: 株式会社吉本岩泉事業所 由井 正宏 氏
山林と加工、町内と町外、多角的に観る岩泉。

(由井正宏氏)
 

入社の経緯を教えてください。

 3人兄妹の長男なので家業を継ぐことは考えていましたが、修行のためということで大学卒業後、住宅メーカーの営業職に就きました。勤務先は千葉県・幕張の展示場で、同じメーカーでも3つ、4つの展示場が集まるような関東一の激戦区といえるようなところでした。修行にはうってつけの配属先でしたが鉄骨住宅を扱うメーカーでしたので、木材とは全く縁がなく、地元に戻ったとき林業に関してはゼロからのスタートでした。
 30歳で地元に戻って(株)吉本に入社し、重機の操作まではしませんでしたが、チェーンソーでの伐倒や造林などもしていました。2、3年は現場作業に従事し、その後管理職につきました。
今は書類作成など事務作業が増えて事務所に人手が必要なため、自ら現場作業をするというのはなかなか難しいですが、入社当初は現場作業もできたので地元に戻ったタイミングは良かったかもしれないです。
 

(FSC®森林認証を取得している社有林でインターンシップ職場体験)
 

いざ、岩泉に来てみてどのような印象を持ちましたか?

 岩泉事業所に来ることになったのは今から5、6年前で、その当時は弊社の事業所があるというくらいで岩泉のことをまったく知らなかったです。初めて岩泉に来て感じたのは、「遠い」ということでした。盛岡までは近いですが、その先が遠い。また、宮古や久慈など隣の市町村へ行くのにこんなに遠いのか…と思いました。
 遠いというほかに、皆伐が多いという印象がありました。長野では最近皆伐を始めたばかりですが、盛岡から岩泉への道のりで何か所も皆伐地があってびっくりしました。伐ったものを全部売っているのか、伐りっぱなしなのか、それともその後植えているのか…と、カルチャーショックでした。
 その他に感じたことは、山が急だということです。しかし、群馬県上野村にも事業所がありますが、岩泉と雰囲気は似ているし、岩泉よりも山が急かもしれないくらいなので驚きはなかったです。カラマツが多いところなど木も似ているし、そこまでショックは受けなかったです。また、林業が盛んという印象があります。佐久穂町と比べて、木材加工業、木材を業としている人が町内に多いですね。比較的大きな佐久市でも製材所が5つある程度なので。
 あとは、ことば…方言がすごいな、と。岩泉事業所長になった当時、関係各所あちこちに伺いましたが、正直ことばがわかりませんでした。今は話の流れなどもあり何を言いたいかわかるようになりましたが、当時は違和感がありました。
 

(原木にFSC®認証の刻印)
 

FSC®認証に期待していることを教えて下さい。

 FSCへの期待としては、認証材だからということで、丸太が少しでも高く売れるように付加価値がついてほしいです。まだまだFSCの認知度が低いため、エンドユーザーが欲しがるように認知度が高まると良いですね。岩泉町内の事業者でもFSC材を使おうと考えてくださっている方がいるため、弊社だけの判断でFSCを辞めるということはできません。ひとりでも続けるという人がいるなら続けないと…という思いです。
 

(製材風景)
 

好きな木は、何ですか?

 針葉樹ならカラマツです。愛着がありますし、クセがある分研究の余地・可能性があると思っています。また、経年変化で深みが出てきますし、内装材、集成材としても良く、土木資材としても強度があり持ちがいいので。
 広葉樹ならトチです。板に挽いた時のウロ、木目が波みたいで良いですし、葉っぱも特徴がありますし。カウンターや一枚板のテーブルなど、2mくらいの元玉の板があると最高ですね。

会社名:株式会社 吉本 岩泉事業所
所在地:岩手県下閉伊郡岩泉町浅内字松野45番12
事業概要:山林事業、木材加工販売、社有林管理、その他