先進地視察 1.西粟倉編

先進地視察最初の訪問先は岡山県西粟倉村。

岡山・兵庫・鳥取の3県に隣接する人口1,500人・面積57㎢とコンパクトな村で、森林率は岩泉町と同じ9割超え。しかし人工林が85%、スギ・ヒノキが5割ずつと山の様子は全く異なっています。

初日は宿泊地・あわくら温泉元湯にて元湯を運営する村落エナジー・井筒社長と酒うらら・道前様のお二人にお会いできました。

(村落エナジー・井筒社長)

井筒社長は愛知出身で学生時代に教授から「田舎こそチャンス」と教わり、外貨獲得の方法を考えた結果、たまたまエネルギーの世界に入り込んだとのこと。地域の経済活動を支える手段としてバイオマスに注目し、西粟倉村で4億円のエネルギー支出を生み出している。西粟倉村での薪利用促進の一翼を担っておりバイオマス供給の他、木質バイオマスに関するコンサル事業も行っています。

「元湯に来るお客様の8割以上は木質バイオマスボイラーを利用していることを知らないで来る」と苦笑いながらもお話をされているけれど、カスケード利用が進む西粟倉村の活動に対する自信を感じました。

※翌朝、ボイラーを見せていただきました!面白い張り紙も(笑)

(酒うらら・道前様)

道前様は島根県出身。日本酒好きが高じて自ら日本酒を取扱い、現在日本酒づくりにも挑戦しています。森から産業をつくっていく取り組みが中心の西粟倉は真面目で固いイメージがあったけれど、良い意味でそのイメージを壊してお酒の場を作ってくれたと評価されています。

出張酒屋をしていて、岩手にも出張した経験もあり、ほとんど西粟倉村にいないらしいです(笑)「日本酒のおいしさを知ってもらうには飲んでもらうしかないから、出張酒屋をやっている」「気合の入っていない酒屋に気合を入れに行っている」と豪快な方でした。

 

(西粟倉村役場・長井様)

視察2日目の最初は村役場にて、西粟倉村「百年の森林構想」について林野庁から出向している長井様に説明していただいました。長井様は久慈にも出向していた時期もあり、岩泉町安家地域に馴染みがあるとのことで不思議なご縁を感じました。

この10年の取り組みとして、平成16年に地域再生マネージャー事業で地域活性化への動きを始めたことと、平成の大合併の時期に独立を決め森林資源活用を模索したことが原点とのこと。「百年の森林構想」は平成20年に着手、村長をはじめ役場職員らが説明会を実施し、賛否両論ある中で行動を起こし実績づくりを開始。平成25年には環境モデル都市構想に選定され、平成26年にはバイオマス産業都市にも選定されています。決して順調であったわけでなく、行政・民間がそれぞれの役割を担い、スピード感をもって活動した結果であることは見習いたいものです。

「百年の森林構想」の大きな柱は川上と川下の事業で、森林創造事業として山への還元スキームをつくり、森の学校事業で市場に出て消費者と繋がり、木質バイオマスによるエネルギー供給まで行っています。岩泉町でも議論してきた入口と出口の問題に正面から取り組んでおり、実績があがっているので、これからの取り組みについて自信が持てました。安定供給・契約面積の拡大、獣害被害対策といった山側の課題は共通していて、難しい現状も再認識しました。

 

(美作森林組合・中蔦様)

次に訪問したのは森林組合。施業管理について素晴らしい取り組みをされていて驚くばかりでした。

説明してくださった中蔦様は前職で精密機械の工場にて工程管理をしていた経験を活かし、施業の組立・進捗管理を改善していました。作業員が取り組みやすく、わかりやすい形ながらも、しっかりとPDCAがまわる仕組みになっていて、すぐには導入できるわけではないですが、素材生産だけでなく製材や加工業でも参考になるものでした。ちょっと羨ましかったです。。。

 

(木薫)

木薫は保育園や幼稚園の遊具など幼児向けの木製品を製造販売していて、西粟倉村での森林資源活用関連での起業第一号とのこと。もともと森林組合の一部門だったものがスピンアウトした形で起業されていて、地元の西粟倉・森の学校から仕入れるなど地域材を利用してはいるけれども、繁忙期には素材が間に合わず高知から仕入れることもあるとか。ちょうど繁忙期真っ最中で工場はフル稼働でした。お邪魔でないか気がかりでした(^^;

 

(西粟倉 森の学校・井上社長)

西粟倉村最後の訪問先は森の学校。井上社長には去年5月に岩泉町に来町され、つくる会にて講演もして頂きました。今回は、こちらが訪問する形で再会しました。また会員にもなっていただきました!

工場はもともと写真アルバムをつくっていた工場跡地で、そこに製材機、乾燥機、加工機を導入していまの形になっています。主力商品のユカハリを生産するのには既存の機械では効率が悪いので、独自にカスタマイズされたもの。製材とチップを同時にできる機械、ユカハリ用の圧着機械など面白い機械があり、生産工程とともに楽しめる工場見学でした。

 

村全体の取り組みから個別事業の現場を見ることができましたが、実は一部。他にも視察したい場所はありましたが、タイムアップで西粟倉村を後にすることに。。。一部でも、どれも参考にすべき点が盛りだくさんでした。

最後に2日に渡りご案内いただいた井上社長に感謝申し上げます。これからも岩泉町をよろしくお願いします!