【岩泉の森の人にきく】新北菱林産株式会社 岩泉工場 芦久保吉徳さん、佐藤真太朗さん

 このコーナーでは、岩泉の明日の林業をつくる会 に所属し、共に岩泉の森や町で活躍する「森の人」 をインタビューしていきます。今回は、新北菱林産(株)岩泉工場の芦久保吉徳氏と佐藤真太朗氏をご紹介します。
 
FSCの恵みを紡ぐ 素材生産と加工
“素材”と“加工”の二刀流

 

Part2: 新北菱林産株式会社 岩泉工場 芦久保 吉徳 氏、佐藤 真太朗 氏
岩泉産FSC®認証材利用の先を駆ける。

(佐藤真太朗氏(左) 芦久保吉徳氏(右))
 

新北菱林産(株)についてと、お二人の経緯を教えて下さい。

佐藤:
 弊社の工場は、八戸、久慈、岩泉、北上、田沢湖の5か所にあり、岩泉工場は北上工場の次に生産能力はあります。しかし、県全体でも言えることですが、バイオマス発電、伐採作業の担い手不足などの影響で生産量は右肩下がりの状況です。運び込まれる原木については、八戸では針葉樹メインですが、それ以外の工場は基本的には広葉樹を扱っています。
芦久保:
 従業員数については、北上工場はチップ受入れの業務などがあるため15~20名弱ですが、岩泉を含むその他の工場は5、6名です。私自身は、久慈工場との兼務で岩泉工場長になって4年目、週に2回の岩泉勤務です。
佐藤:
 私は岩泉工場在勤7年目と、珍しく長期に渡っています。地域貢献として消防団にも所属して岩泉を満喫しています。
 

(運び込まれた原木を土場で仕分け)
 

岩泉工場について、特徴を教えて下さい。

芦久保:
 素材生産者側で選別をあまりしていないということもありますが、用材に使える大径の原木が多く入ってくるのが岩泉の特徴だと思います。久慈工場と比較して、樹種が多いのも特徴です。例えば、ミズメなどは久慈からも取りに来るケースがあります。岩山に生える木、ミズメ、アンチャ(斧折樺)などは、久慈工場の場合はたまにしか入ってこないです。
岩泉工場への原木運搬で使われるTW(てーだぶ)は、久慈では山の中で使ってはいますが、土場で積み替えが行われるため久慈工場への運び込みでは使われていません。
佐藤:
 山自体にも行っていますが、請負で伐採してもらっているので作業状況の確認など、業者さんの家に行ったりもします。久慈の場合には、山を買っても伐採の請負事業者がいないので原木が入ってくるだけですが、岩泉工場ではこうした業務も通年でやっています。他の工場とは違った仕事があるため楽しいです。
 

(原木をチッパーにつながるコンベアに乗せます)
 

岩泉に来てからの思い出を教えて下さい。

芦久保:
 以前は工場内で製紙を担当していましたが、団地にある工場内での業務だけで地域と密着していませんでした。岩泉では原木やチップを運んでくれる人、地域の人たちと関係することができ、地域貢献、地域に参加することができます。みなさんと話をするのが楽しみで、いろいろ聞くことができたくさんの情報があります。
 岩泉の担当になってから、町内の登れる山はすべて登りました。登っていないのは、夏場深い笹で覆われてしまうため雪がある時でないと登れない青松葉山くらいで、それ以外の山には行きました。山のてっぺんから見れば木がどこにあるか見えるので、けっこう行きました。岩泉は広くてつかみどころがないので、休みになればバイクで行って山に登って、今では岩泉の山を大体把握しています。徒歩だと熊が出るので、バイクで行けるところまで行って登っています。安家~久慈の平庭までバイクで抜けられる道がありますが、とても景色が良くおすすめです。
 

(規格に合った大きさのチップに裁断)
 

FSC®認証について思っていることを教えて下さい。

佐藤:
 FSC®認証は新北菱林産(株)全体で取得しています。そのため、CoC認証については岩泉工場はマルチサイト認証で、番号を振り分けられていいます。FM認証については、岩泉町のグループ認証で、安家地区の半城子の社有林が認証林です。FSC®認証の広葉樹原木は、町有林の更新伐のほか、木炭生産組合、(株)吉本などから入ってきます。
 書類の提出などの手続きといった当たり前のことをやっていればよいので、FSC®認証が面倒ということはありません。ただ、監査に来られるとビクビクしますが…。
芦久保:
 ヨーロッパはFSC®が定着しているので、日本もヨーロッパのように当たり前になって増えると良いですね。環境問題などへの社会からの要請もより厳しくなりますので。
 

(できあがった広葉樹の木材チップ)
 

好きな木は、何ですか?

芦久保:
 イタヤです。品がありますよね。板にしたときの色や葉っぱの色が良いですし、葉っぱの形も良いので。また仕事の上では、チッパーに入れる前の重機で太い材を割る作業で、硬いため綺麗に気持ちよく割れるのでイタヤがくると「イタヤだ…」「綺麗だ…」と思いながら割っています。
佐藤:
 ナラです。コナラのほうが良いですが、ミズナラ、コナラ問わずです。いろんな用途に使えるところが良いですね、キノコ、炭、薪…将来的には家の暖房を薪ストーブにしたいです。仕事をする上でも、丸太に重機のツメを少し入れると「パカン」と綺麗に割れるので、割った時の気分が良いです。ケヤキの場合などは、ベリベリベリ…と、むしるような感じで割れづらいので。

会社名:新北菱林産株式会社 岩泉工場
所在地:岩手県下閉伊郡岩泉町二升石字西野49番地
事業概要:製紙用原料の木材チップ製造